好きなのに 125

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 だが友香の作品をそこに置いたとしても迫力的にも充分見劣りしたりしないだろう。
「すごい、ベンシャーンをお持ちなんですか?」
 友香が目を輝かせて沢村に尋ねた。
「母が好きなんで。松本洋介とか」
「わ、ほんとに? 私も好きです。いいですよねぇ」
 佐々木はのんびりとした友香を見ながら、むしろ沢村が買う方がいいかもしれないと思い始めていた。
 さっきもそうだったが、友香は佐々木が買いたいと申し出たとしても、周ちゃんにならあげる、としか言わないかもしれない。
 別れた時も、佐々木は友香にはなかなか連絡が取れず、実家に連絡を入れてせめていくらかの慰謝料をと彼女の母親に申し出たのだが、娘は一切受け取らないと思うし、大変勝手を申し上げたのはこちらだからむしろこちらからお渡ししなくてはならないなどと言いだされ、何とかそれを固辞するので精一杯だったのだ。
「ほんまに買うのか?」
「もうカード、サインしちゃいました」
 ああ、ブラックカードね。
 何やら以前、沢村が絵を買うみたいな想像をしたことがあった気がするが、まさかそれが友香の絵になるとは、思いも寄らなかった。
「ありがとうございます。でも、周ちゃんのお友達だし、半額とかにしようか?」
 またとんでもないことを言い出すし、と佐々木は心配になる。
「気をつかわなくて大丈夫ですよ」
 沢村は相変わらず無愛想な顔で言った。
「お客様、お届けは明日の作品展最終日を待って、その後になりますが、よろしいですか?」


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