好きなのに 23

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 語気を荒げる沢村に、佐々木もつい口調が強くなる。
「………わかった。おやすみ」
 沢村の溜息が聞こえた。
「……ああ、気ぃつけて、おやすみ」
 少し無言の間があってから、沢村の携帯が切れた。
 電話で言い争いなどしたくはなかった。
 友香のことは、何となく誤解があるように思えたが、それ以上何か言っても堂々巡りな気がしたし、何をどう言えばいいのかもわからない。
 直子と行くのだと言えばよかったのかもしれない。
 沢村が変なことを言うから、言葉足らずになってしまったのだ。
 それに、と佐々木は思う。
 良太とのことを沢村はあまり話さない。
 着物ショーの時も思ったが、良太だけでなく青山プロの面々とも親しげだし、小林千雪と面識があるなんて話も初耳だ。
 というより、あれが小林千雪だったのか、と着物ショーの時、小夜子に従弟と紹介されたきれいな青年を思い出した。
 そういえば、去年、ちょうど沢村と出会った日、小夜子と話していたのが小林千雪だったのだ。
 それで、ショーに出てもらおうと言った時、藤堂や良太が彼はダメだと言ったのか。
 いや、小林千雪なら文化人として著名なわけだし、あんな美形なら余計に。
 ん、待てよ、確か、以前読んだ著書のカバーに映っていた写真、えらい度の強い眼鏡かけてはったみたいな………
 推理小説は好きなので小林千雪の著書もほとんど読んでいるが、特別何か気になることがなければ著者の写真などには興味はない。
 ここに直子がいれば、世間知らずな佐々木の疑問にも明快な答えをくれるのだが。
 それより気になるのは良太のことだ。


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