好きなのに 24

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 良太のことをあまり話さないというのは、やはり沢村が好きだったが振られた相手というのは良太のことだろう。
 あの時、植山にさらに殴りかかろうとした沢村をとめた良太も、沢村のことをよくわかっているようだった。
 振られたと言っていた。
 良太には彼女がいるんだろうか。
 ベッドに入っても、いろんなことを考えてしまい、しばらく寝付けなかった。
 こんな夜は不意に聞こえてくる救急車の音やどこかで啼いている犬の声までが不安をかきたてる。
 いい加減ああでもないこうでもないと思いを巡らせた自分に呆れた佐々木は、ベッドを降りてサイドボードからブランデーを取り出してグラスに注いだ。
 クソ! 中学生の恋わずらいじゃあるまいし、何でこんなグルグルせなあかんね……
 グラスを一気に空けたので、少しむせてしまった。
「会いたくないわけ、ないやろ、アホ!」
 沢村の言葉が蘇って、思わず口にする。
 それでなくても、仕事以外の時はほとんど沢村のことで頭が占領されているというのに。
「大人はセーブせなあかんことが山ほどあるんや!」
 直子に宮崎に行ったらと言われた時、心の中では行きたいと思ってしまったのだ。
 だからつい反射的にスキーに行くと言ってしまった。
 そうでもしなければ、本当に宮崎行きの便に乗ってしまいそうだった。
「ったく、三十過ぎのオッサンが、選手ら目当ての可愛い彼女らに混じってコソコソ行けるかっての!」
 大きな溜息とともに灯りを消すと、カーテンの隙間から一筋の淡い光が差し込んでいる。
 珍しく晴れた空には煌々と輝く冬の月をしばらく眺めながら、佐々木は胸の奥に燻る熱さをもてあましていた。


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