好きなのに 31

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 佐々木の方は暢気なもので、既に意識は作品の方にあった。
「これはね、アンダルシアにある教会でね、私が生まれた街にあるの」
 周平にひとつひとつ丁寧に作品の説明をする友香は、佐々木と年齢はそう変わらないはずだが天真爛漫な少女といってもいいような、ふんわりとした感じがある。
 直子も含めて、友香を評して春日がゆるキャラとひとくくりにしているのは直子も頷ける。
 だが、作品群はこのファンシーな雰囲気の友香が作者というには意外なほど、勢いよく豪快な作風であり、彼女の内面的な激しさを如実に物語っていた。
 直子は二人のあとから作品を眺めながら、優しい眼差しで友香の言葉に頷いている佐々木を観察しながら、やはり佐々木は友香のことを忘れられないのだろうかとその心を思いやっていた。
 はっきりいって、下手をすると焼けボックイに火、というやつね。
 しかし、友香の心の中はどうなのだろう。
 佐々木の思いに友香が応えなかったとしたら、それは悲劇的だ。
 あまりに可哀相過ぎる。
 佐々木も、そして沢村も。
 佐々木が作品をあらかた見終わった頃、ギャラリーのスタッフがお茶を入れてくれたので、窓際のテーブルセットへ三人は移動した。
「あの、池山さんはいかがでした? 私の絵」
 おずおずと友香が直子に尋ねた。
「色はブルー系が多いみたいですけど、何か、それぞれの作品に熱を感じます。それと風や空気が動いている、みたいな。あの、街の絵、一番好きです」
 直子はクリエイターではないが、絵を見るのも好きだし、直感的、感覚的にものを捉える術を持っていると、以前、春日に言われたことがある。
「ああ、俺も。あの絵、ええな」


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