好きなのに 32

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 それは八〇号のアンダルシアの街を高台から見下ろした構図になっており、傍らの巨木が印象的だ。
「わ、ほんと? 嬉しい。実は私の一番のお気に入りなんだ」
 言葉通り友香は素直に喜んでいるようだ。
「これからどうするの?」
「うん、当分こっち。そのうち多分、向こうとこっちと半々くらいになると思う。お母さんがちょっと身体壊して、もう大分いいんだけどね、お父さん、また海外の仕事だから」
 佐々木の問いかけに、一瞬戸惑いを見せながら笑った。
「そうなん」
「でも、私ね、料理、できるようになったんだよ? 向こうでアトリエ借りて、しばらくは貯金とかで絵だけ描いてたんだけど、そのうちそれもなくなったし、隣がレストランでね、そこで仕事させてもらうようになって、料理、教えてもらったんだ」
 唐突に話を変えた友香は、外国人のカップルに声をかけた。
「紹介するね、レストランのシェフのフェルナンドとオーナーのアナ、フェルナンドのお姉さんなの」
 やってきた二人に、友香は佐々木と直子を紹介した。
 アナは大人の女性という感じだが、フェルナンドは自分と同じくらいだろうか、と直子は思った。
 それに、何となくフェルナンドの佐々木を見る目つきがあまり好意的ではない気がした。
 ふーん、姉弟だったんだ、なるほど、さっきからこの人、佐々木ちゃんを気にしてるみたいだと思ったけど………
 多分、この人、友香さんに気があるんだ。
 直子がそんなことを考えながらフェルナンドをチラッと見やったところへ、ドアが開いて藤堂たちがやってきた。
「こんばんは、ちょっと見せていただきます」
「いらっしゃいませ」


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