好きなのに 35

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 一人離れてまた絵を見ていた直子は、いつの間にか隣に立った藤堂を振り返った。
「何だか、いつもの直ちゃんと違うね」
「うん……、ちょっとジェラシー? 佐々木ちゃん、盗られちゃうみたいな」
 そう、こんなとこ、沢村っちには見せられないな…
 でも、友香さんと元の鞘にもどるのが佐々木ちゃんにとって幸せなことだとしたら、どうしたらいいんだろう。
「直ちゃんと俺って、ちょっと似てるとこあるよね。余計なことまで見えちゃう」
 直子は藤堂を見上げた。
「だって……沢村っち、泣いちゃうと可哀相だもん」
 藤堂は笑みを浮かべた。
「直ちゃん、今日はえらく気合入ってるけど、これからライブとか?」
 同じゆるキャラにまとめられたとしても、こちらは余計なことは全然見えない手合いだ。
「ちがーう、このあと佐々木ちゃんとお食事なの!」
 浩輔の言葉を訂正する振りで、直子は少し声を上げた。
「え、どこで? 俺もお腹空いてきた。それにスキー合宿のこと、まだ時間とか決めてないし」
 時刻は間もなく終了時間の七時になろうとしていた。
「ごめんね、時間遅くなっちゃったね」
 直子の声が聞こえたのだろう、佐々木とあれこれ話していた友香が立ち上がった。
「ほんまや、えろう長居してしもて。もう終わりやろ? トモちゃん、ご飯どないするん?」
 佐々木の言葉に直子が思わず二人を振り返る。
「フェルナンドたちと一緒にお店予約してあるんだ」
「そっか、ここいつまでやったっけ?」
「来週の水曜日が最終」
「ほな、頑張ってや」
「うん、どうもありがとう、来てくれて嬉しかった」
「お母さん、お大事にな」
「うん、ありがとう」


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