好きなのに 36

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 佐々木が立ち上がった時、直子には友香の目が少し潤んでいるように見えた。
 結局、佐々木と直子の食事に浩輔がおまけでついていくことになり、藤堂と悠とはギャラリーを出たところで別れた。
「さて、さすがに腹が減ったな」
 そう言いながら、佐々木は携帯を取り出した。
「すみません、七時半に予約している佐々木ですが、一名追加、できますか? はい、よろしくお願いします」
「え、予約してたんだ、俺、ついてって大丈夫です?」
 携帯を切った佐々木に浩輔がすまなそうに尋ねた。
「OKやって。ダメだって言われたら他あたればいいだけやし」
「よかった、すみません~」
「歩いて十分ほどやから、歩くか。直ちゃん、平気?」
 佐々木は直子の顔を覗きこむ。
「うん、全然平気」
「それにしても、友香さんって、見かけによらずっていうか、きゃしゃっぽいのに、作風がすごく大胆で面白いですよね」
 浩輔も友香の絵を結構気に入ったらしく、少し興奮気味だ。
「昔からそうなんや。スペイン行って、さらに豪快になったな」
 佐々木が笑う。
「ちょっと、コースケ!」
 直子が浩輔の腕を引いた。
「何だよ?」
「少しは佐々木ちゃんの気持ちも考えて発言しなよね」
 直子は浩輔にすばやく耳打ちする。
「え?」
「佐々木ちゃんは嫌いで別れたんじゃないのよ!」


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