好きなのに 38

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 それがさ、あの人、今頃になって、来てくれないかと思った、なんて、虫が良すぎない?
「直ちゃん、なんか、顔が怖いんだけど……」
「あたしだってたまには、怒ることもあるのよぉ、鈍感なんだからぁ、浩輔ちゃんて」
「え、俺、やっぱ、そう? こないだ、三浦さんに真面目な顔で、良くも悪くもある意味、浩輔くんは鈍感だ、なんて言われちゃってさ……」
 はあ、と浩輔は溜息をつく。
「いいのよぉ、鈍感じゃなくなったら、浩輔ちゃんじゃないしぃ」
「何だよ、それぇ」
「割れ鍋に綴じ蓋だって、藤堂さんも言ってたよ? 浩輔ちゃんと河崎さんって」
「はあ?」
 後ろの二人のやりとりは時折聞こえていたが、うっすらと笑みを浮かべながら、佐々木は佐々木で友香とのことを考えていた。
 作品を見たとき思ったのは、別れて正解だったのかもしれないということだ。
 少なくとも友香にとっては。
 作品は格段にいいものになっている。
 別れる前辺りの作品が不本意なものだということは、佐々木にもわかっていた。
 どうしてやることもできないもどかしさに、地団太を踏んだこともある。
 会えてよかった。
 不思議とわだかまりを感じることもなかった。
 これでよかったんや………
「お、着いたで」


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