好きなのに 43

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 その日は沢村にとって移動なしの久しぶりの休日も、午前中はランニングやトレーニングで汗をかいたのだが、午後は部屋で読書をしたりネットを見たりしていたものの、何となく手持ち無沙汰で、少し昼寝をしたあと夕方また少しランニングをして過ごした。
 外で食事をしてホテルに戻ってきた沢村は、ベッドに腰を降ろしてしばらく携帯を見つめていた。
 二日前、電話で言い争いをして嫌な切り方をしたことが、こうして一人になるとひどく気になる。
 だが、また電話をして同じことを繰り返すのは利口なやり方ではない。
 佐々木に言ったように、プライベートを仕事に引き摺るようなことはしないつもりだ。
 というより、調子が悪くてもプライベートのせいにはしたくない。
 むしろプライベートで何かあったり、そういう時こそ、逆にヒットを量産したりする。
 捻くれているからな。
 沢村は自嘲する。
「週末、スキーに行くとか言ってたな、佐々木さん……ちぇ」
 プラグインの連中と行くとかいうのが、沢村はどうも気に入らない。
 特に藤堂に関して。
 それに、別れた元奥さんに喜んで会いに行くって何だよ。
 佐々木さんはほとんど覚えていないらしいが、初めて会った夜、結構酔ってたからか、トモちゃんが置いていったとかって、泣きも入ってたんだぞ、トモちゃん、トモちゃんって。
 あの人、ほんとは奥さんのこと今でも忘れられないんだ……
 くそ、と思う。


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