好きなのに 69

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 アーティストの面々が鍋をそっちのけで芸術談義に華を咲かせているところへ、のっそりとやってきた銀色の大きな毛玉が佐々木の腕を鼻先でつついた。
「おや、ワンコや。気がつかんかった、大人しいな、ハスキーか」
 佐々木は毛並みのよい犬の首の辺りを撫で摩る。
「すんまへん、お邪魔してもて、シルビー、おいで」
 犬を追ってやってきたのは噂の小林千雪である。
「小林先生の犬ですか?」
「はあ、先生はカンベンしてください。絵はいつでも見られますから、まずは鍋の方どうぞ、なくなってしまいますよ、ガッツリ食う男どもばっかやし」
 千雪が言うと、「おっと、そうだった」「まだ食べたりないわ」とばかり、高津や悦子らは鍋のあるテーブルへといそいそと戻っていく。
「そういえば俺、小林せ……小林さんの本結構読んでるんですよ。ミステリー好きやし」
 佐々木は千雪に言った。
「それは嬉しな。三流探偵小説とか言われたりしてますけどね」
 自嘲気味に千雪は笑う。
「言いたいやつには言わせておけですよ」
「そらそうですね」
「ねえ、ユキ、さっき京助が焼いてたブルーベリータルト、もう持ってきていい?」
 その千雪に向こうのテーブルから声をかけたのは良太と話していたアスカだった。
「ああ、ええよ、俺、持ってくるから。ほな、ごゆっくり」
「千雪さん、俺、持ってきましょうか?」
 今度は良太が呼びかけた。
「ほな、一緒に来てくれるか、良太」
「了解です」


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