好きなのに 78

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 京助が老人にちょっと頭を下げる。
「いやいや、こちらこそ、うちのモンがお世話になりまして」
「平造さん、お久しぶりです」
 秋山も懐かしげに平造の顔を見る。
「あ、工藤のご意見番で、平造さんです。軽井沢に住んでいるので」
 良太が藤堂と佐々木に平造を紹介した。
「平さん、こちら、プラグインの藤堂さんと、クリエイターの佐々木さん」
 今夜は平造が夕食を手伝ってくれることになっているという。
 佐々木は良太や大らとリビングにテーブルを作り始めた。
「何か、存在感のある人やな」
 佐々木はテーブルにクロスをかけながら良太に言った。
「平さん? まあ、そうですね。でも、料理の腕はプロ級で、ああ見えて、フレンチとか作っちゃうんですよ」
「へえ、すごいな。この街に住んでるて?」
「ああ、工藤さんの別荘が割りと近所にあって、普段はずっとそこで管理をしてて、時々、東京のオフィスにも来ますけど」
 その日の夕食はステーキと数種類のシチュウ、温野菜のサラダなどがテーブルに並んだ。
 いろいろなワインのコルクもかなり抜かれ、あちらこちらで会話も弾む。
 佐々木は千雪とミステリーの話に興じていた。
「クリスティの『バートラムホテル』、結構怖いですよね」
「なんかぎょっとする、いうか。小説として面白いと思たのは『災厄の町』かな」
 最初佐々木は原夏緒の絵のことを聞こうと思って話しかけたのだが、いつの間にか千雪の小説の話から、好きなミステリーはということになった。
「ああ、あれは『エジプト十字架』やなんかから随分時間的に経過してるから、雰囲気も違うし」


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