好きなのに 88

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 それからまたドアが開いて入ってきたのは肇だった。
「おう、肇、今日はどこ行ったんだ?」
「近場。スノーパークとかって。お前は?」
 肇は良太の隣に身体を沈みこませながら聞いた。
「佐久の方。佐々木さんと浩輔さんとかと。お前ら、ずっと二人であちこち行ってるんだろ?」
「バカ、午前中ちょっと滑ってから、美術館行ったりしてたんだよ。かおりが行きたいって言うし」
「何だよ、ラブラブでいいじゃんかよ、このやろ!」
 そんな二人を佐々木は微笑ましく見ていたが、「そういえば、高校の同級生いうたっけ?」と二人の会話に口を挟んだ。
「ええ、高校ってか、こいつとは小学校から一緒で」
「リトルリーグの頃から、一直線だけがとりえのこいつには手をやきましたよ。沢村と出くわせば必ず喧々囂々、そのうち取っ組み合い」
 いきなり沢村の名前を出されて、うわっ、な良太に苦笑する佐々木に、「まあ、ガキの頃は野球やってれば誰でも夢はプロ野球選手なんですけどね、高校卒業するまでにはほんとになれるかどうかなんてわかっちまうもんだよな」などと肇はしみじみ溜息をつく。
「いんだよ、好きで野球やってたんだから」
「なーにが、メジャー行ってイチロー三振にとるって喚いてたのは誰だよ」
 肇はハハハと笑う。
「うるさいな、可能性の話だろ。例え1パーセントでも全くないとはいえないんだよっ!」
「まあな。だが、99パーセントプロ間違いなしってやつもいるからな、たまに。沢村なんかすごかったもんな、実力といい人気といい。結局大学行ったけどまた大活躍でさ、ああゆうのが、根っからのスター選手ってんだろな」
「根っからのスター選手か」
 風呂から上がり、自分の部屋に向かう途中、佐々木はひとりごちた。


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