好きなのに 92

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 何や、みんな楽しげやなぁ。
 佐々木はふと顔をあげて周りを見回した。
 どの顔も笑いに溢れている。
 楽しくないわけはない、と佐々木は思う。
 思うのだがやはり、ずっと沢村と言葉をかわしていないことがほんとに楽しいと思えない原因なのだろうか。
 意地張ってないで、直ちゃんの言うように、宮崎でもどこへでも行ったらよかったんやろか。
 いや、その前に、電話、電話せな………
「俺にもお茶お願いします」
 良太と浩輔も研二の菓子をもらって佐々木のところへやってきた。
「順番に並んでねぇ」
 佐々木の隣で、直子が言った。
「おい、良太、確かもう一人、お前のダチが今日くるんじゃなかったか?」
 お茶の順番待ちをしている良太のところへ、京助がやってきた。
「あっ」
 まったりとお茶を飲んでいる浩輔の横で、良太は慌てて腕時計を確認し、「あ、多分、十時は過ぎるかと……」と言いながら顔をひきつらせる。
「わかった。食事は用意しておく」
「すみません」
「あ、部屋は千雪と同室だから、来たら千雪に案内させてくれ」
「えっ、はい………」
 ワインにほろ酔い気分で、すかんと頭から飛んでいた問題が舞い戻る。


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