好きなのに 94

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 三田村や佐久間が面白そうに口にした。
「おう、良太、きたぞ」
 能天気な沢村の声が佐々木の耳にも届いた。
「お前、この時間にここにいるって、どういう魔法だ?」
 良太が腕時計を見ると時刻は九時にあと数分というところだ。
「魔法も何も、タイムテーブル見ながら乗り継ぎを走って一個前の新幹線に乗っただけだろ」
 しれっとタネを明かす沢村は目で佐々木を探している。
「トラベルミステリーかよ」
 そう言ってから、良太はこそっと囁いた。
「佐々木さんには言ってないからな、お前、どうやって説明するんだよ」
「どうもこうも、身体がもうもたないんだ、仕方ないだろ」
 意味をストレートに取って、良太は一気に酒が回ったように顔を赤くした。
「沢村くん、久しぶりぃ」
「おう、かおりちゃん! 飯島も一緒だって?」
 良太の後ろから顔を見せたかおりは、ほどよく酔って笑っている。
「うん、あっちにいるよ。まだ、美味しいものいっぱいあるから、こっちこっち」
 かおりは沢村の腕を掴んで、料理が目一杯並ぶリビングの中央へと連れてきた。
 そこでようやく佐々木を見つけたが、静かにお茶を点てている佐々木は沢村の方を見ようともしない。
 その横では直子と浩輔が交代にかいがいしく茶碗を取り替えたりして手伝っていた。
 ちょうどまたアストリッドとリアがその向かいに座り、お茶についてまた佐々木に尋ね、佐々木が優しく微笑みながら説明をすると、「ビューテイフル!」「ステキ!」などと口々に言って喜んでいる。


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