好きなのに 99

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 もちろん、その喧嘩腰の怒鳴り声でリビングの面々から一斉に二人へと視線が注がれた。
 良太は天を仰ぐ。
 いつもはほんわかムードの直子もキッチンから戻ってきてその声を聞くと、リビングにさしかかったところで足を止めた。
 幸か不幸か、悠や高津、悦子らアーティストの一団は部屋で飲みなおすらしく、リビングにはいなかったし、かおりと肇のカップルは二人で別荘内の美術散歩としゃれ込んでいたし、未成年の大と亜美は食事を終えると佐々木のお茶をもらってすぐ部屋へ上がってしまっていたから、残ったのはすっかり出来上がった連中か、酒豪かどちらかである。
 ちょうどシルビーの散歩を終えてリビングに戻ってきた千雪も当然、何ごとかと沢村に目を向けた。
「いつ、誰がそんなこと言うた!?」
 あまりな決めつけに佐々木も感情のボルテージが上がってしまい、声が大きくなる。
「キャンプ中は会わないとか言っちゃって、俺を追い払っといて実は元の奥さんとより戻そうってつもりじゃないのか?」
 あからさまに苛立ちを見せて沢村は怒りに満ちた声で言い放つ。
「……は? 何をアホなこと……俺はただ、トモちゃんの個展を見に行く言うただけで……」
「トモちゃんトモちゃんて、やっぱあんたはまだトモちゃんに目一杯未練があるわけだろうけど、そう簡単にあんたを渡すと思ったら大間違いだからな!」
 考えてもいない疑いをかけてきたと思えば、沢村は目をギラギラさせてすごむ。
「ほんまに頭冷やせ! 話にならんわ!」
 佐々木は呆れと憤りに席を立ち、たったかリビングから出て行こうとした。
「待てよ!」
 沢村は佐々木に追いすがり、その腕をぐいと引き寄せて、いきなり唇をふさいだ。


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