笑顔をください 15

back  next  top  Novels


 おそらく彼らはエスカレーターに乗っかれるのに甘んじて、遊んでいるとああなる、という典型だ。
 すっかり勉強もわからなくなり、悪ぶって粋がっているが、あの手合いはそう害はない連中だろう。
 問題はむしろそうやって表に出てこないところで燻っている。
「そういえば許可証はもうもらっているのか? バイク通学には許可証の申請をしなくてはいけないんだが」
「え、いや」
「じゃあ、あとで事務室に連れて行ってあげるよ。転校早々でいろいろわからないこともあるだろう。よかったら校内を案内しようか」
「いいんですか?」
 志央の親切ごかしな巧言に藤原はたちまち破顔する。
「もちろん」
 志央はとっておきの笑顔を返す。
「よろしくお願いしますっ!!」
 つき従う藤原七海は、ちぎれんばかりに尻尾を振る気のいい大型犬を連想させる。
 この分だと何か楽勝、って感じ? そうだ、この賭けに負けようものなら、携帯持ってかれるんだ! しかも幸也にキスなんて、そんな不気味なこと、絶対ごめんだ!
 要はこの犬を手懐ければいいんだ、見かけによらず弱っちいやつだし、と志央は心ひそかに笑い、手を叩く。
 けど、何だったんだろう? さっきの…。
 どこかで見たはずの光景。
 妙に温かかくて、それでいて切ない。
 思い出そうとして思い出せず、志央は首を傾げた。


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ