笑顔をください 18

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 体裁は多少不細工だが、ボリュームのある栄養バランスのよいその弁当は七海が自分で作ったという。
「え、その弁当、母親が作ったんじゃないのか?」
「母親はガキの時亡くなったんで、家事はほとんど俺の仕事なんです」
 あっけらかんと七海は笑った。
「そうなのか」
 そういう不幸みたいなものとはてんで縁がなさそうなヤツなのに。
 ツキ…、と、何かが志央の心をつつく。
「へへ、料理はばーちゃんじこみ。親父、ずっと海外赴任だったんで、カナダで生まれ育ったんです。小学校の時、お袋の病気で一度帰国して、お袋亡くなるまで一年くらい妹と一緒に鎌倉の祖父母にあずけられてたんですけど、ばーちゃん、足悪いし」
 母親という灯りの消えた家の中で、幼い七海は唇を噛みしめて懸命に家事をしていたのだろうか。
「へー、お前、帰国子女?」
「ええまあ、へへへ」
 帰国子女、なんて言葉と縁がなさそうな男は、大盛り弁当を志央の目の前で小気味いいほどガツガツ平らげていく。
 美味そうに食うなー
 見事な食べっぷりに志央はしばし見とれてしまう。
「妹、いるんだ?」
 志央は七海の女版を想像してみる。
「はあ、ひとつ違いで、女子高の寮に入ってます。去年じーちゃん亡くなって、今は家にはばーちゃんと俺だけ」


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