笑顔をください 20

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 三年前の春の日、桜の花びらが風を受けて空を流れていくのをぼんやり見ていた志央の目の前で、姉の美央はボールを追って道路に飛び出した小さな女の子を助けて、自分がトラックに跳ね飛ばされた。
 即死だった。
 突然、世の中で一番大切な存在が消え失せるという事実の重さに志央の心は耐えられなくて、その時のことを考えようとすると頭の中が空白になる――――。
 
 
「志央さん?」
 また意識が浮遊していたらしい。
「え、ああ、キンピラ、美味かったぞ!」
 だけど、こいつと一緒に食べると、美味いし楽しい。
 このところ、夜の享楽的な気分の高揚ではない、清々しい楽しさを志央は思い出した気がするのだ。
 昨日は焼きおにぎりやツナおにぎりに、チキンサラダ、さばの竜田揚げ、というメニュー、その前の日は、みそだれのスペアリブに、ひじきの煮物、ブロッコリーのサラダ。
 料理というよりおかずといったものばかりで、冷めていても妙に温かみが感じられる。
「メシも美味いよな、いい米使ってる?」
「メシはね、鍋でたくのがうまいんです。ガスの方が断然米の味をうまく出してくれるし」
「へー…そうなんだ」


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