笑顔をください 31

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 七海は勝浩の真剣な眼差しをまともに見つめた。
「城島志央、学内の人間ならたいてい、高嶺の花で崇め奉ってるんだ。言い寄ってくやつなんて吐いて捨てるほどいるんだぞ。けど城島志央が相手にするわけないだろ? 理事長の孫だし」
「そうだよなー。きれーだもんなー、あの人」
 たまたま七海と同じクラスになった勝浩は、昼休みの七海の行動を怪訝な顔で見ていたのだが、どうやら志央に夢中になっているようすの七海にいたたまれず、忠告してみたというわけだ。
 だが七海のほうはまるで夢見ごこちだ。
 これは聞く耳を持たないな。
 密かに勝浩は嘆息する。
 二人のことは最近ちょっとした騒ぎになっていた。
 学内では仮面をかぶって、幸也以外誰かをそばに置いた試しがない志央が、七海と親しくしているのが、勝浩としては妙に気になるのだ。
 七海が転校してきて教壇に立ったときは、その図体の大きさに圧倒され、しかも五部刈りの茶髪頭だ、クラスはしーんと一瞬静まり返った。
 とんでもないやつが入ってきた、とみんなびびったに違いない。
 だが、「えっと、皆さん、仲良くしてください」なんて、今時小学生でも言わないような自己紹介をして、五部刈り頭をしきりと掻きながら照れくさそうに笑った途端、クラス内の緊張が一気に解けた。


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