笑顔をください 41

back  next  top  Novels


 馴れた手つきでフライパンを操る七海の横で志央が、手伝う、と調味料に伸ばした手を、一瞬遅れて伸ばした七海の手がまともに握ってしまう。
 ハッと息を飲み込む七海の顔はもう真っ赤だ。
「わっ、すんません」
 志央がわざと七海の手を取って、「お前の手、暖か~い」なんて言うと、七海は慌てて手を引っ込める。
 意識してるしてる、いい反応じゃん。
 まるきり女の子くどいてるみたいだ。
 今時こんなウブそうな女の子いないぞと、心のうちで志央はニヤニヤ笑う。
 ここまできたらキスひとつくらいすぐにでもOKって感じじゃないか。
 幸也の方は案の定前途多難のようだ。
 昨日も帰りに誘おうとして、「いつからストーカーになったんですか」だなんて、勝浩に手ひどく振られていた。
「美味いぞ、これ!」
 これ…………美央の、味だ……。
 でき上がったオムライスは一口食べた途端、志央に懐かしい味を思い出させた。
 不覚にも目頭が熱くなり、慌ててスプーンを動かす。
「よかった」
 目を細めて七海は柔らかく微笑む。
「あれ、ピアノ、弾くんですか?」


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ