笑顔をください 43

back  next  top  Novels


 七海の言葉は不意打ちに志央の心を揺らす。
「だまれ! お前に何がわかる」
 まるで志央の心をわかってますというような目が癇に障る。
「すんません…俺、差し出がましいことを…」
 志央の剣幕に七海は大きな体を縮こませる。
 七海の作ったささ身ときのこのスープも、アボカドとアスパラガスのサラダも美味しいはずなのに、広いダイニングキッチンのテーブルに向かい合った二人は黙々と平らげる。
 少し冷静になると、小学校の頃に母親を亡くしたという七海が適当な慰めを言ったのではないのだと、おそらく七海は子供心にそうやって自分を奮い立たせて生きてきたのだろうと志央も思い当たる。
 何となく気まずい空気の中、食べ終えた食器を持って七海がシンクに立った。
「お茶、用意するから、それ置いといて向こうでソファに座ってろ」
 志央がハーブティを煎れてリビングに持っていくと、七海はテーブルの真中に置いてあるいくつかの小さなハーブの鉢を覗き込んでいた。
 ポットの中のブーケガルニは、ミントやカモミールなど美央が育てていたハーブで志央が美央を真似て作ったものだ。
「このミントって、サラダにしてもうまいんですよねー」
 しばらく黙ってお茶をすすっていたと思った七海がほのぼのと口にするので、志央は噴出した。
「お前って地球上の生物が絶滅しても最後まで生き残るタイプだよな。食えそうだったら何でも口にしそう」
「えー、そんなに笑わなくても。ほんとにうまいんですよ、さっぱりしてて」


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ