笑顔をください 48

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 一瞬の空白から志央が目を開けると、心配そうに覗き込む七海の顔があった。
「志央さん…あの…」
 羞恥と怒りを一緒くたにして、志央は思い切り七海を突き飛ばした。
 こいつ、こいつ! 調子に乗りやがって。
 キスにほだされちまうなんて!! 何で、俺が、こいつに、いかされなくちゃならないんだっ!
「す、好きなら、突っ走ればいいってもんじゃないだろ?」
「す、すみませんでしたっ!」
「……てけ…、出てけ、出てけっ!!」
 七海は目一杯うな垂れて、それでもまだ名残惜しげな顔で口をへの字に曲げ、顔を見ようとしない志央の背中にぺこり、とひとつ頭を下げドアの向こうに消えた。
 志央は思わず傍にあったティッシュの箱をドアに向かって投げつける。
 クソ! 写真なんか撮れるかよ! あんな状態で!
 こっちが手玉に取るはずだったのに、クッソォ! あのヤロウ!
 ま、まあ、男だし…。あのくらい…減るもんじゃなし。
 ソファに背中をあずけたまま、足を投げ出し、志央は頭をかきむしる。
 何だよ…、何がひっかかってんだよ…。
 さっきから頭を占めているもやもやした説明できない感情に自問自答する。
 キスも…いやじゃなかった。
 ってより…
 だから何だってんだよ、俺は……。
 宙を見つめたまま、しばらくぼんやりしていた志央だが、ハーブのやけに鮮やかな緑色に気づくと、大きな身体をかがめて葉を摘んでいた七海を思い出して知らず苦笑していた。
 


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