笑顔をください 49

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 週明け、それでも弁当を手に志央の現れた七海は、叱られて尻尾を垂れた犬のようにシュンと肩を落とし、恐る恐る志央を窺い見た。
「嫌いになりました? 俺のこと」
 バカ正直もほどほどにしろ、教室の前で何てことを言うんだと、土曜の晩のことが頭を掠めて一瞬にして全身に熱が上がるのを覚え、志央は慌てて七海の腕を掴んで屋上のいつもの定位置へと向かう。
「ほんとにすみませんでしたっ!!!」
 いきなりコンクリートの上に膝を折り、擦りつけんばかりに頭を下げる。
「もういいってばっ…」
 恐る恐る上げた七海の顔は、この上なく情けなくて、志央は何だか可愛いやつなんて思ってしまう。
「……で、今日は、何だよ、弁当」
 だからもう、つい許している。
 七海はそれを聞くとすぐに相好を崩し、嬉しそうに弁当を広げた。
 

 

 

 五月末の創立祭委員会を前に志央は雑事に追われていた。
 講演を依頼している評論家や国内外からの来賓への日程、予算の確認、フォーラムに出席するメンバーの最終選定に加えてピアノとバイオリンの演奏者を生徒の中から決めなくてはならない。
 音楽教育に熱心なフランスの姉妹校の理事長が出席するため下手な演奏は聴かせられないが、プロを呼んで演奏させるのでは無意味なのだ。


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