笑顔をください 52

back  next  top  Novels


 色々自分に言い訳してみるのだが、実のところ賭けなんか、いっそこのままなかったことにしてしまえばいい、と志央はそんなことを思い始めていた。
「幸也、フォーラムの出席者リストは?」
「ああ、全学年昨日で出揃った」
 創立祭のフォーラムでは、海外のゲストや大学教授、それに近隣の生徒会役員とともに、有志を募っての討論会が予定されている。
 環境問題がメインテーマだが、他にイジメ問題などについても話し合う。
 WEBを使って、いろんな高校との情報交換なども行うことになっている。
 壁の時計は七時半を過ぎていた。
 校舎は小高い丘に建っているので、日が沈み、部活も終わって生徒たちがいなくなると、学園を取り囲む鬱蒼とした木立の群れが闇に黒々と浮かび上がり、薄気味悪いものになる。
 しかもバスもなくなっている時間だから、街まで坂を歩いて降りなければならない。
「今日はこんなところで、明日にしようぜ」
 志央はまとめていた資料のファイルを閉じ、ノートパソコンを終了させて電源を落とすと、カバンを抱えて、「おさきに」とあとの三人に声をかける。
「おい、待て、送る」
 幸也は志央の後を追おうと、慌ててカバンを掴む。
「ああ、俺、七海にメシおごる約束してるから。いつも弁当作ってもらってるしさ」
 志央はドアのところで振り返り、「鍵、頼むぜ」とドアを閉める。
「まさか、やっぱ、あの二人マジ、デキちゃったんっすか?」


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ