笑顔をください 54

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 あまりの豪快さについ見入っていた志央の皿に自分の餃子をハイ、と載せる。
 腹が減りすぎてガツガツしながらも、志央の世話も七海はもちろん忘れない。
「え、ずっと図書館にいたのか?」
「いや、六時で追い出されましたから、ベンチで寝てました」
「お前、風邪引くぞ。生徒会室、くればよかったのに」
「だって、お邪魔でしょうが」
 顔を赤くしながら断固として答え、志央に熱い眼差しを向ける七海を見ると、志央はやはり何かしらのわだかまりが拭えない。
「ちょっとその辺、飛ばしてみますか?」
 店を出ると、志央にヘルメットを渡しながら七海が言った。
「あ、うん…」
 七海がエンジンをかける。
 志央が七海の背中から腰に腕をまわすとバイクは斜めに車体を倒しながら、ゆっくりカーブを描いて走り始める。
 流れていく街の灯りに漂うような浮遊感。
 風を切って走っているとすぐに寒くなるが、七海の広い背中にしがみついているのが妙に心地よい。
 どうしよう。
 この心地よさを誰にも譲りたくない。
 どうしよう、俺…。
 七海……。
「ここ、ちょっといいでしょう」
 坂の上には寺があるらしい。


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