笑顔をください 57

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 ダメだ、と否定しようとするのに、七海の腕の中は居心地がよすぎる。
 再び、七海は唇を寄せる。
 ヤローのタコぼーず相手のキスなんか、夢中にさせといて、とっとと逃げ出す、そんなシナリオのはずだったのに。
 もういいや、やっぱりもう賭けなんか止めよう。
 それで幸也が納得しなければ、負けを認める! 携帯なんかまた買えばいいんだ。
 キスだって何だってこの際してやろうじゃん!
 そう考えれば何もかも吹っ切れる。
 じゃないと、自分は七海をずっと騙していることになってしまう。
 俺、七海のこと……マジ?
 七海を、好きになってる…?。
 美央と同じ暖かさを持ってるからだけではない。
 志央は美央がいないことをやっと認めることができた気がした。
 やっと、ひとりで立って歩いていけそうな気がするのだ。
 七海を見ていたら、そう思えるようになった。
 七海と一緒なら……。
 波に抱かれるように、志央は七海の腕の中で揺れている。
 心がひどく熱くて、たまらない。
「今度、江ノ島行きませんか? 俺のバイクで」
 七海の声が耳元で囁く。
「海見ながら走るの、スカッとしますよ」
「ああ、いいな、それ」
 志央は夢を見るように呟いた。
 江ノ島か。
 晴れれば気持ちいいだろうな。


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