笑顔をください 58

back  next  top  Novels


 創立際のための作業は放課後、連日続いていた。
 志央が図書館から数冊の本を抱えて生徒会室に戻ると、灯りが消えていた。
「何だ、もう帰っちゃったのか、みんな」
 ちょっと怒りながら、ドアを開けて中に入ると、薄闇の中にまだ人影があった。
「幸也……? 脅かすなよ。なんだよ、灯りもつけないで」
 志央が灯りをつけると、窓に寄りかかっていた幸也はゆっくりと体を起こし、志央に近づいてくる。
「堺はもう帰ったのか?」
「志央」
 それには答えず、机の上に本を置いた志央を、幸也がすぐ間近で呼ぶ。
「なに?」
「賭けはもうやめにしないか? お互い不毛なことやってると思わないか? 勝敗は関係なくご破算、それでいいだろ?」
 志央はクスクス笑う。
「さすがの幸也も、堺相手じゃ暗礁に乗り上げたか。俺も実は同じこと言おうと思ってたんだ」
「お前も、もう、あのタコ坊主に取り入る必要なんかないさ。だろ?」
 幸也の言葉に志央は躊躇する。
「あ、ああ、もう、賭けは止める。だけど、七海は…」
「七海……ね。ミイラ取りがミイラになんてんじゃないだろ?」
 図星をつかれて志央はうろたえる。
 常日頃クールさを装ってはいるものの、元来自分を取り繕うことなど志央は得意ではないのだ。
「え……な…んだよ、それ……」
「おまえ、まさか……」


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ