笑顔をください 60

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 走りこんできたのは七海、そしてその後ろから勝浩が顔を見せる。
「こんの…ヤロー!」
 かあっとなって七海は幸也に掴みかかり、志央から引き剥がすと、幸也に殴りつける。
 咄嗟にその拳をよけた幸也は、ふふんと笑う。
「俺を殴るのはお門違いだぜ。志央に騙されたのはお前の方だ」
 幸也の口から出た言葉が志央を凍りつかせる。
「志央と俺がよくやる遊びだ。どっちが早く落とすかってな。こいつの外面に、まんまと引っかかりやがって」
 幸也は笑いながら続けた。
「こいつの甘言にほいほい尻尾振ってついてくるお前を見て、ほくそえんでたんだぜ? 志央がてめーみてぇなヤローにウツツを抜かすはずがねぇんだよ、タコ!」
 志央は七海を見た。
 だが、出てくる言葉はない。
「それで長谷川さんのターゲットは俺だったわけですね? どうりで、やたら親切ごかしな態度をとっていたわけだ」
 追い討ちをかけるように勝浩が嘲るような言葉を放つ。
「……ほんと…なんですか? 志央さん」
 低く、唸るように七海は口を開く。
 険しい眼差しが、志央を、心臓を射抜くように向けられる。
 その眼差しはもうどんな言い訳も許さないと言っている。
「……ああ。そう…だ………」
 七海はしばし二人を睨みつけ、唇を噛んだ。


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