笑顔をください 69

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 未練たらしくピンクの犬のぶら下がった携帯を机の上に置いて眺めては七海は溜息をつく。
 当の本人はこのていたらくだが、転校して一カ月以上がたち、七海がただ優しいだけのでくの坊だとはもう誰も思っていない。
 体育の時間くらいしか垣間見る機会がないにもかかわらず、その抜群のスポーツセンスに、既にいろんな運動部が勧誘に動いている。
「俺、生徒会の仕事あるけど、時間があれば乗っけてってくんない? 途中まででいいから」
「あ……、ああ、いいよ」
 勝浩に言われて、ちょっとおどおどしつつも七海は頷いた。
「じゃ、携帯番号教えて。連絡入れるから」
 七海の番号を携帯に登録して教室を出た勝浩は、まったく、と呟く。
 七海はここのところまさしく生彩を欠いてる。
 やることはドジばかりなのだ。
 原因はわかっていた。
 さっきも生徒会と言っただけで、バカみたいに反応していた。
 何もかもあの城島志央のせいなんだと、怒りのオーラを背負い、勝浩は勢いよく生徒会室のドアを開けたのだが、誰もいない。
 冊子作りが済んだので松永も今日はこないだろう。
「ほんとに、あの二人ときたら、何をこそこそやってんだか。こないだも揃って出て行って結局戻ってこなかった」


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