笑顔をください 80

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 そんな憎まれ口をたたく志央に、「はあ、どうも」と、七海は無感情な視線もすぐにそらすと、志央の横をすり抜け、勝浩の傍に寄り添った。
「すごいじゃん、七海、カッコいい! ピアニストになれば?」
 興奮した声で勝浩が賞賛する。
「バカ言え。あんなの譜面どおりに弾いただけだ。専門家が聴けばすぐ化けの皮がはがれるさ」
「でもすごい」
 二人のやりとりを後ろに聞きながら、握り締めていた自分の拳が震えているのに、志央は気づいた。
 途方もなく重い絶望感。
 こうなったら、徹底的に嫌われるまでだな。
 志央は一層自虐的なことを考えながら、進行役としての務めを果たすべく、ステージの中央に出て行った。
 
 

 

 創立祭を境に椿事が起きた。
 学園内の七海のにわかファンの女の子がおおっぴらに七海を取り合うようになり、互いに牽制しあい、一躍七海はアイドル扱いだ。
 醜いアヒルの子が白鳥になったかのごとく変貌した七海からは、もう志央の部屋のキッチンで照れくさそうにオムライスを作ってくれた七海を見つけることはできなかった。
 迷惑を被っているのは勝浩かもしれない。
 人数は少なくても女の子の圧力はすごいのだ。


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