笑顔をください 83

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 西本からのメールだ。
『ここ数日ラグビー部の桜庭が欠席していたが実は行方不明になっていたらしいです。その桜庭から新聞部宛てに手紙が届きました』とあり、次からその桜庭の手紙の文面になっていた。
『告発する。俺はあるグループを牛耳る男に弱みを握られ、仲間に引き込まれた。堺を襲わせたのも俺だ。その男の言うまま暴行や恐喝を繰り返してきたが、このままでは部にも迷惑をかける。自分が暴行を受けたほうがまだましだ。だが、そいつは親の地位まで左右する力もある。どうしたらいいかわからない。桜庭幸治』
 極めて由々しい内容だ。
「幸也、桜庭の家に連絡とってみてくれ」
 志央は言うと、勝浩に向き直る。
「堺、桜庭は同じクラスだろ? 今日いたか?」
「いいえ、ここ二日ほど休んでますけど」
 やはりあの桜庭が、とは思うが、ラグビー部の副キャプテンで、責任感がある男だ、未だに信じ難い。
 しかし、グループを牛耳っている黒幕ってのはいったい…。
 桜庭のヤツ、バカなことをしなければいいが。
 西本は引き続き、桜庭について調べてみるとメールを結んでいた。
 勝浩が迎えにきた七海のバイクで帰ったのを見届けると、幸也はタクシーを呼んで志央を家に送り届けた。
「夜は家から出るな。とにかく戸締りを忘れるな」
「まさかそこまでするかよ。ああ、わかった、ちゃんと鍵はかけとくし」
 幸也は志央の家の前で念を押すように言ってタクシーに乗り込んだ。
 家に帰って、ベッドに横たわっても、得体の知れない不安と焦りが志央の頭から離れない。
 どうしたらいい、七海。
 携帯も鳴るはずもないのに、耳を済ませてしまう。
 あの暖かい笑顔が傍にあったならな………。
 七海………
 一筋の涙が頬を伝って落ちた。
 学校では極力虚勢を張っているのだが、気が緩むと途端に身体中がもろくなる。
 拭っても後から後から流れる涙が止まらない。
 泣いたって、失ったものはもう戻ってはこないのに。


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