笑顔をください 88

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 五月も最後という日、外は大荒れで雨と風が激しく吹きすさび、傘も役に立ちそうになかった。
 春の嵐ってとこか。
 志央はぼんやり窓の外へ視線を向けて心の中で呟いた。
 朝から幾度となく窓に打ちつける雨だれを見つめながら、一日が過ぎていく。
 今日、生徒会の引継ぎが終われば、明日から晴れて自由の身だ。
 そしたら、もう生徒会にも関わりがなくなり、もう、七海とも関わりがなくなる。
 それを考えると、またキリキリと胸が痛むのだが、目の前で勝浩と仲良くされるよりはマシかもしれない。
 ポケットを探っていて、携帯のストラップに指が触れ、志央はそれを取り出した。
 七海がくれた犬のストラップ。
 こんなものを後生大事に持ってる俺なんて、俺じゃないよな。
 勝浩は女の子じゃないが、とても可愛いし、小柄で華奢でさぞ守りがいもあるだろう。
 俺なんかでは、確かに七海には似合わないな。
 くくっと自嘲する。
 やがて終業のチャイムが鳴り、六時間目の英語が終わると、志央はぐんとのびをした。
「志央、生徒会室、行くか?」
 教室を覗いて幸也が呼んだ。
「あ、俺、今日日直。日誌出してくるから先行っててくれ」
「わかった」


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