月で逢おうよ 10

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 検見崎がぶーたれているうちに、勝浩はファイルを保存し、パソコンの電源を落とす。
「お待たせしました」
「おう、帰ろ、帰ろ、とっとと帰ろ」
たったか小走りに編集部を出ると、検見崎はエレベーターの下りボタンを押した。
「髭面のくせに、ガキみたいなんだから」
 検見崎の車のサイドシートにおさまってから、勝浩はボソリと呟いた。
「ちゃー、勝浩に言われちゃ、おしまいだぁ」
「俺のどこがガキなんです?」
 光榮社のある神楽坂から車は早稲田通りに入る。そこから目白台の勝浩の部屋までたいしてかからない。
「だって彼女とディズニーランド行って、お泊りしてないっしょ?」
「だから、彼女じゃありませんてば」
 検見崎は煙草をくわえ、ふーん、と疑わしそうに勝浩を見る。
「ほんとに彼女、いないの?」
「いません」
「じゃあ、明後日の飲み会来るよな?」
「ええ? やですよ」
 即答する勝浩に、尚も検見崎が詰め寄った。
「どうして」
「さっき編集部の人たちと話してたやつでしょ? お断りします」
 そう言い合っている間に、車は勝浩が借りている部屋の前に停まった。
「たまには、融通を利かせようよ」
「ユウの散歩があるから、ダメ。じゃあ、どうもありがとうございました」
 にこやかに車から降りる勝浩を見送って、検見崎は大きくため息をつく。
「こりゃほんと、一筋縄じゃ、いかねーわ。可愛い顔してるくせに」
 煙草を灰皿に押しつぶすと、ハンドルをきって、検見崎は通りへと車を走らせた。


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