月で逢おうよ 11

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 キャンパスを囲む常緑樹がうっそうと連なるその傍らを通り抜け、勝浩は足早に図書館裏へと向かっていた。
目指す先には古びたクラブハウスがぽつねんと建っている。
 『動物愛護研究会』と殴り書きされたプレートがかかるドアの前には、毛並みのよさそうなゴールデンレトリバーと後ろの方にはハスキーが一匹気だるげに寝そべっていた。
「勝浩くん、今日の当番、一人だっけ? ロクたちの散歩、大変じゃない?」
 振り返ると美利が足早に近づいてくる。
「うん、昨日よりは涼しいから、よかったよ。美利ちゃん、図書館とか? レポート?」
「うん、まあ」
 オレンジのキャミソールにジーンズの美利はカラーリングした髪を複雑に編みこんでいる。可愛くてキュートな、勝浩より一年下の文学部一年生だ。
入った当初は猫が苦手そうだったが、今では猫といえば美利にお呼びがかかる。
「あれ、鍵、開いてる。誰かいるのかな?」
 窓は網戸になっているが、灯りはついていない。
「鍵閉めるの、忘れて帰っちゃったんじゃない?」
 鍵は代表の垪和が一本持ち、当番用にはドア横の柱に引っ掛けてある。
外にいるゴールデンのロクやハスキーのビッグは、この柱と大きな銀杏の木とに張られたロープにリードでつながれ、ある程度自由に動くことができるようになっているが、暑い時は木陰から動こうともしない。
「盗られるようなものはないからいいけど」
「だって、外にはロクがいるし、中にはビッグがいるもんね」
 ゴールデンとハスキー、二匹の大型犬の他に、中にはヨークシャーのヨーク、柴系の雑種のポチ、それにシェトランドのチェリーと、犬の檻のような部屋にわざわざ忍び込もうなどという変わり者は確かにいないだろう。


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