月で逢おうよ 13

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 もともと拾ってきたものだから、時々スイッチが利かないこともあるし、そろそろちゃんと使えるエアコンを取り付けたいのは山々だが、いかんせん、運営費のほとんどはメンバーのバイト料でまかなっている。使えるうちは使おうというのがみんなの一致した意見なのだ。
「ロクたちの散歩、一人じゃ大変でしょ? 私、ロク連れて行くよ」
「時間、いいの?」
「うん」
 暑い日は、熱せられたアスファルトの上などを歩かせると、犬の足を傷つけるため、散歩は早朝と夕方になる。朝夕セットで二人ずつが基本として、メンバーがシフトを組んで世話をしているのだが、決められたとおりにいかないのが世の常だ。
 夏休みの間は特に、旅行だ、帰省だとシフトを抜けるメンバーの代わりに、大学まで徒歩十分の勝浩が一週間続けて通ったこともある。だが、もともと好きな犬や猫の世話だからさほど苦にはならない。
「助かったよ、美利ちゃん」
 勝浩が連れているハスキーのビッグは、大きな図体と薄い目の色のせいもあって恐ろしげな面構えをしているが、かなり甘えん坊で、人懐こい。
「ううん、私、犬好きだし」
 ロクに引っ張られるようにして、美利が笑う。
 夕方になっても気温が三十度までしか下がらない中を散歩するのは、人間も犬たちもなかなか大変だ。一人でハスキーとラブラドールを散歩させるのは尚のこと。さらに三匹を連れてとなると、かなりな肉体労働になる。
 二人は犬たちを三十分ほど運動させ、ぐるりと学内をまわってクーラーのきいたクラブハウスに戻る。Tシャツも脱ぎたくなるほど汗だくだ。ロクとビッグに水を与えて、今度は三匹の小型犬を連れてまた外へ。
 戻ってくると、犬たちのごはんだ。
「でもさ、こうやって、元気に食べてるところ見るのが、一番好きだな、俺」
 美利が何も言わなくなったので、振り返ると、美利は勝浩から目をそらす。
「どうした?」
「あのね、勝浩くん」
「何?」
「彼女、いないってほんと?」
 思い切ったように顔を上げた美利は、勝浩をじっと見つめた。
「え………、うん……」


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