月で逢おうよ 20

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「えー、長谷川幸也です。どうも、お待たせしました」
 案の定女の子たちの目は、サラリーマンから一斉にこの華やかな男へと向けられた。
 何で………?
「昨日はニューヨーク、今日はここ新宿と何せ引っ張りだこで、身体がいくつあっても足りなくて……」
「お前はもういいから、後ろの女の子たち、紹介しろよ」
 検見崎が促すと、幸也の両手の花たちが、にっこり口を開く。
「船越ひかりです。NYでモデルやってて、今回、母の実家に里帰り中です」
 どう見たってハーフかなんかだろう、ひかりは超ミニのワンピース、みごとに脚は長い。
「リリーです。ヨロシク」
 こちらは完璧金髪碧眼、日本人ではあり得ない美女だ。
 おおおおっ、とまた男たちから歓声があがる。
「じゃ、リリーちゃんはこっち、ひかり、そこね。幸也はそっち」
 検見崎が仕切って、幸也を端の席に誘導する。
 男たちも幸也とはかなり周知の仲のようで、幸也が席に着くなり、肩を叩き合って、笑っている。
「全員揃ったところで、まずは乾杯ってことで」
 呆然と固まってしまった勝浩のことなどおかまいなしに、場はさらに盛り上がりを見せた。
 少年らしさはすっかり抜け、より一層精悍になった感のある幸也は、ぐんと背が伸びたらしい。相変わらず人の悪そうな笑みを浮かべ、ちょっと危なそうな雰囲気にも磨きがかかったようだ。
 帝大に進学した幸也が、二年の夏アメリカに留学し、航空宇宙工学をやっているらしいと、勝浩も風の便りに聞いている。
 おそらくアメリカでも散々女を泣かせてきたに違いない。
 幸也をただただ見つめながら、勝浩はそんな分析をしてみる。
 や、違うだろ……、だから何でここに長谷川さんが現れるんだよ?
 こんな偶然、詐欺だろ。
 心の準備もできてないってのに、何でこんなとこにいきなり現れるんだよ!


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