月で逢おうよ 23

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 出てくる言葉はついつい突っかかり気味になる。
「それが微妙に、違うんだよなー。うまいよ、くわないの?」
「もうほとんど残ってないじゃないですか」
「あ、悪い、最後のひとかけ、ほら、あーん」
 何気に箸に豆腐をはさんで目の前に差し出され、勝浩はうっと息が止まりそうになる。
「うわ、たれるって! 早く」
 どうにも仕方なくて、勝浩はそれをパクっとくわえる。
「はい、おりこうさんねー」
 勝浩の頭を撫でる手を振り払い、勝浩は口の中のものを飲み込みながら幸也を睨みつけた。
「だから、子どもじゃないんですから」
「ふーん、子どもじゃないってことは、もう、あーんなことも、こーんなことも済ませちゃったってこと?」
 幸也に顔を覗き込まれて、勝浩は耳まで真っ赤になる。
「いやーん、素直な反応。そっか、俺のいない間に、勝浩ってばいろいろ経験しちゃったんだ」
 幸也はにやにやとグラスを口に運ぶ。
「ば、バカなことばっかいって、わざわざ俺をからかいに帰ってきたんですか、アメリカから」
「ビンゴ!」
 笑いながら幸也はタバコに火をつける。
 まったくいい加減なことばかり言って、と勝浩は苦笑する。
 だいたい、俺のいない間にってなんだよ。それこそ俺に何の断りもなく、勝手に留学したくせに。
 まあ、俺に断りなんかするわけないか。
 昔から、そして今こうして再会してもやはり、幸也にとって自分は、そんな風にからかいの対象にしかならないのだ。勝浩は、こんな男を心の奥底で未だに思っている自分が滑稽に思えてくる。
 といって、心のゆくえばかりは自分でもままならないものなのだ。
「で、お前の彼女ってどんなコ? お前のことだから、一人だけに貞操守ってるんだろ?」


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