月で逢おうよ 26

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 名前を呼ばれて、くーん、とユウは幸也を見上げる。
 八畳ほどのワンルームにブルーのカーペットが敷かれ、ベッドに書棚、机、箪笥などが整然と並んでいる。脇には小さなキッチン、バストイレのドアがある。
「なんか、勝浩らしい、部屋だなー」
 幸也はざっぱりと片付いた部屋を見回して、感慨深げに言った。
「感心してんなよ。早くベッド連れてけ」
 検見崎はリードをユウの首輪に引っ掛ける。
「よしよし、ご主人様はあの体たらくだから、俺が連れてってやるからな」
 ドアの前でふと立ち止まると、検見崎は幸也を振り返った。
「お前さ、勝っちゃんにどんな悪さしたわけ? 俺に車を渡すほど何年も気にかけるような」
「……お前に語るほどのことじゃねーよ」
 幸也は言葉に詰まる。
「ひょとして、勝っちゃんの女、取ったとか?」
「バーカ、してねーよ。ただ、まあ俺、多分、嫌われてっからな」
 幸也はにやりと笑う。
 ユウが検見崎を急かしたので、検見崎はもう何も言わず、ユウと一緒に外に飛び出した。
 しんと静まり返った部屋のベッドで眠る勝浩の、すうすうという寝息が幸也の耳にも聞こえてきた。
「無防備に可愛い顔して寝てるんじゃないよ」
 勝浩の頬を指でちょんとつつき、幸也はボソッと呟く。
 ジーパンのベルトとボタンをはずしてやると、勝浩は、うん、と寝返りをうった。
 すると勝浩を見つめていた幸也は立ち上がって窓を開ける。
 煙草をくわえてみたものの、火をつけようとしてやめると、しばしライターをもてあそぶ。
 空に浮かぶ月は満月だ。
「やばいねぇ、こういうのは。狼に変身しちまいそう」
 背を向ける幸也の独り言も知らぬげに、月は鈍く輝いている。
 夜の闇に隠れた思いまでも、明るみにさらそうとするかのように。


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