月で逢おうよ 31

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 車のキーらしきものをちゃらちゃら手でもてあそんでいる幸也の後ろには、志央が大人の美女といちゃらいちゃらくっついたまま歩いている。
「負けちゃったじゃない、志央」
「俺は安全運転だからね、君に怪我させたくないしさ」
 ドイツ車? 安全運転?
 いくら誕生日早くても、二年の冬に十八歳になるわけないじゃん、普通。
 ギロッと睨みつける勝浩に、ようやく幸也が気づき、さすがにちょっと驚いたようだ。
 勝浩はその場で何か言うでもなく、踵を返すと、家族に合流した。
 三学期の生徒会は静かだった。勝浩が、いつ、何を言うか、幸也も志央も戦々恐々として、ようすを伺っていたに違いない。
 思えば、その頃からこの二人は何人女を落とすか、なんてことを競争して、しかも賭けなんかをしていたのだろう。
 人の心をもてあそぶなんて、ほんとに許せないやつらだ!
 そう思う傍から、勝浩の目は幸也を追っていた。
 だから、幸也が誰を追っていたか、はたでみていれば一目瞭然だったのだ。
 そして度を越した遊びの賭けの代償は、幸也と志央の間にあった危うい絆の亀裂。
 どちらが先に落とすか、性懲りもない、志央のターゲットは春にやってきたでかい転入生、そして幸也はこともあろうに勝浩をターゲットにしたのだ。
 女子生徒が少なかったからか、きれいな志央に夢中になるのは女子ばかりではなかった。
 だが、まさか志央がそのターゲットに本気の恋をするなんて、幸也としても思ってもみなかったのだろう。
「女やガキ相手なら、俺も許してたさ」
 幸也が志央にキスしているところを勝浩は垣間見てしまった。
「ヤローになんかお前が本気になるなんて思ってなかった」
 急に自分に優しくなった幸也のことを、勝浩も変だとは思っていた。
「志央と俺がよくやる遊びだ。どっちが早く落とすかってな」
「ほんと、サイッテーだよ、あんたたちって」
 露悪的な台詞を吐く幸也に、勝浩は辛辣な台詞を投げつけた。


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