月で逢おうよ 37

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 慌てて大杉があとを追いかけて出てきたが、かえってクロは彼から逃げようと、犬と戯れているお年寄りの足元をすり抜けた。そのとき、驚いたお年寄りが振り上げた手がユウの頭に当たった。
「あ! ユウ! だめ、戻れ!」
 こちらも驚いたユウが、クロを追うように駆け出した。勢いでリードが勝浩の手からはずれ、ユウは勝浩の静止も聞かず、あっという間に門から飛び出してしまった。
「すみません、垪和さん、ちょっと俺、見てきていいですか?」
「いいわよ、こっちは気にしなくて」
 大杉のクロはしばらくしてよその家の塀の上にいるのが発見され、勝浩と大杉とで捕まえるのに成功した。
 だが、もしやホームに戻っていないかとかすかな期待も空しく、ユウの姿はない。
「俺も行こう」
 肩を落としてまた探しに行こうとする勝浩に、ビッグを連れた幸也が声をかけた。
「二手に分かれよう。俺、こっち行くから」
「お願いします!」
 一時間ほど探したろうか、依然ユウの影も形も見あたらない。携帯が鳴り、幸也が見つかったか、と聞いてくるのだが、見つかりません、と勝浩は力なくうなだれる。
 二人は一旦老人ホームに戻ると、ビッグも他の犬や猫と一緒にワゴンに乗せた。
「すみません、もう少し、探してみますので、ビッグ、お願いします」
 そう言って、ワゴンを見送ったのだが、勝浩はすっかり落ち込んでいた。
「勝浩、そうがっかりすんな。らしくないぞ、いつもの負けん気はどうしたよ」
 ぽん、と幸也は勝浩の肩を叩く。
「だって、俺が悪い…」
 俺が、他のこと考えてたから……
 勝浩は唇を噛む。
「とにかく車であたりをまわってみようぜ。ほら、乗れよ」
 促されて勝浩は、幸也の車に乗り込んだ。
「なんだっけ、犬ってさ、帰巣本能とかあるだろ。家に向かってんじゃないか?」


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