月で逢おうよ 4

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 検見崎はいつの間にか勝浩の後ろに立って腕組みをして見おろしている。
「余計なお世話です。検見崎さん、仕事があるんでしょ? さっさと行った方がいいんじゃないですか」
「もう、勝浩くんってばつれないんだからぁ。男心の裏側をちっとも察してくんないしぃ」
 ぐちぐちと女子高生のような科白を並べてシナを作り、周囲の失笑をかっていた検見崎だが、ラブ、行くぞ、と、黒いラブらドールを従えてドアに向かってから、ちょっと勝浩を振り返る。
「勝浩、明日は編集部、行く日?」
「ええ、橋爪さんには明日来いって言われてます。あさってはここの当番俺ひとりだし、ちょっと無理かも」
「んじゃ、明日ね」
 賑やかな検見崎が背中を向けたまま、ひらひらと手を振ってクラブハウスを出て行くと、部屋の中はやがて和やかな静けさに包まれる。
 かなり憎まれ口をきいているが、勝浩はこの検見崎を嫌っているわけではない。
この会に入ってからお節介なほど世話をやいてくれ、出版社のバイト先まで紹介してくれたこの先輩のことを頼もしく思っている。どころか、散々からかわれながらも何故か検見崎の傍にいると妙に安心できる、そんな存在なのだ。
 ただし、検見崎とよく一緒にいるために、学内で検見崎と自分とがひとくくりにされることが勝浩はあまり面白くない。
 何しろ、耳にはピアス、きれいに整えられた髭、当世風なファッションで決めて赤いベンツなんかを乗り回し、既にマスコミの仕事もしているという検見崎は、十二分に有名人なのだ。
 女を引っ掛けるくらいしか考えていなさそうに見える検見崎が、ボロ小屋同然のクラブハウスで、楽しそうに犬やら猫やらと一緒になって遊んでいる、というのもまた意外性で面白いらしい。


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