月で逢おうよ 44

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 山荘といっても、元はペンションだったものを検見崎の母親が買いとったのだという。和、洋合わせて八部屋あって、うち半分はバストイレ付という豪華なしろものだ。
 女の子たちは大きな家族風呂を楽しみにしていて、部屋割りする時に一番眺望のいい広い和室をさっさと確保している。
 男たちの部屋は、検見崎によって勝手に割り振られた。
だが、「俺、勝浩とか?」という幸也の発言が、部屋に荷物を運ぶときも、勝浩の中でずっと引っかかっていた。
 幸也が合宿に参加すると聞いた時は、「また会いたいと思ってたのよ!」と喜んでいた垪和よりもずっと勝浩は心がドギマギして嬉しかったのだ。
 道中、幸也はまた散々勝浩をからかうし、アメリカでのおかしな話ばかりを聞かせるので、こんなに笑ったことはない、というほど楽しかった。
「アニマル・セラピーって知ってますか?」
 だから、ついうきうきと、この先自分が何をやりたいか、なんてことまで、勝浩は幸也に語ったりした。
「聞いたことはあるな」
「人と動物とがふれあうことで互いに生まれる心身への働きを考えるっていう科学があるんです。そういう研究をしている教授がいて、そのゼミをとるつもりなんです」
「へえ、いいじゃねーの? 俺もな、あれだ、ニュースで動物虐待とかって聞くだろ? 見つけたらぶっ殺したろかってくらい、腹立つんだよ、そういうの」
 何だか微妙に話がずれているが、それはそれで、勝浩にも納得するところがあった。
「うん、動物園とかで面倒見切れなくなったからって、人間の都合であちこちやられて。動物の心をもっと考えろって、思いませんか?」
「全く人間は勝手な動物だよな」
「俺ね、小さい頃、動物園に連れて行ってもらうでしょ? なんでみんな檻の中にいるのかな、って思ってた。狭いところにずっと閉じ込められて、ひどく悲しそうにみえて」
「だな。ヒョウとかライオンとか、サバンナを走り回るのがほんとだもんな」
 何だか自分のことを幸也にわかってもらえている気分になっていたのに。
 やっぱ、俺と一緒じゃ、いやなのかな?


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