月で逢おうよ 48

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 ひょっとしなくても幸也は彼女と約束をしていたのかもしれない。だから、幸也は自分と一緒の部屋をいやがったのだ。
「ちぇ、考えてたって仕方ない。風呂入って寝よ」
 立ち上がるのも億劫な気分だったが、湯船に湯を張ると、バスタオルを持って風呂に向かった。

 
 
 幸也が部屋に戻ってきたのは、十二時になろうという時間だった。
「……ん……長谷川さん…」
 ややあって、傍らに誰がが立っている気配に、寝ぼけ眼で勝浩は幸也を見上げた。
「悪い、起こしちまったか。いいから寝てろ。ちょっと煙草吸ってくるから」
 くしゃっと勝浩の髪を撫でると、幸也はまた部屋を出て行った。
 そのまま幸也が帰ってこなかったのは、翌朝、勝浩が起きて、隣のベッドが使われていないことでわかった。
 勝浩はふうっと大きくため息をつく。
「仕方ないじゃん」
 だいたい、忘れてるはずだったんだから、長谷川さんのことなんか。
「何で今更、また、昔みたいにあの人のことでどぎまぎしなくちゃならないんだよ、俺」
 自分に言い聞かせるように言うと、ユウにリードをつけて散歩に連れ出した。
 どうせ今だけのことだし。
 この合宿が終われば、またあの人は住む世界が違う人になるだけだ。
 変に期待したりしたら、またがっかりするのが関の山だ。
 世の中、思い通りに行かないことの方が多いんだから。


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