月で逢おうよ 50

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 幸也がいそいそとパンを皿に取り分けていると、あくびをしながら検見崎も現れた。
「あ、いいな、いいな、勝っちゃん、こんなやつの分はいいから、ボクたんに作って作って」
「何だと、タケ、あとからきて図々しいんだよ」
 朝っぱらからふざけ始める二人の分を勝浩は仕方なく作ることになってしまった。
 午前中いっぱいは、ハイキングコースを走ったり、二ヵ所にあるテニスコートのうち山荘の裏手のアンツーカーの方を臨時ドッグランにして犬たちを自由に走らせ、一緒にフリスビーをやったりして、犬も人間も思い切り楽しんだ。
 その間中、幸也はなんだかんだと勝浩に絡んできて気がつくと一緒に過ごしていた。
 もともと人懐こいビッグやユウまでもすっかり幸也にも懐いたようだ。
「ようし、行けー!」
 フリスビーをくわえたビッグは一目散に走ってくる。ユウも負けじと走る。コロコロと実に楽しそうで、ビッグと一緒に土まみれになっている幸也を見ると、勝浩も心から笑った。
「お前がそんな風に笑うの、始めてみたな」
 ベンチに座っていると、疲れたと言いながらビッグやユウを従えて幸也がやってきた。
「え…………そうかな」
 そうかもしれない。高校時代、幸也の傍にはいつも志央がいたから。だから、どこかしら自分は卑屈になっていたのだろう。
 あの頃の自分を思い出して勝浩は今度は苦笑する。
「くそ、犬つながりだったとはなー。そうと知ってれば、とっくに犬連れで散歩でも誘ってたのになー」
 なにそれ?
 何気なくそんな言葉をはく幸也に、勝浩はまたしても卑屈な気分になってしまう自分が嫌だった。
「今度、俺の部屋にも来いよ。うちの犬も紹介するからさ。こないだやっと引越し荷物も片づいたし、うちから一匹連れてこようと思ってるんだ。向こうから連れてきた猫もいるし」


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