月で逢おうよ 57

back  next  top  Novels


 ちょっと語気を強くして語る幸也に、勝浩は驚いて苦笑いする。
「そう……ですね、一寸の虫にも五分の魂、って言いますもんね」
「またまた、悟りきった仙人みたいな例え」
「祖父がよく言ってたんです」
 幸也の微笑みが妙に優しく見える。
「まあ、ミクロはミクロなりに、近場から開発を進めていくのさ。さしあたってまず月だな」
「え、月? ってあの月?」
「そう。俺は独自に月をベースにした交流の場を創るプロジェクトも計画している。地球からすると月は離れ小島みたいなもんだろ?」
 忘れていたが、この人はそんな最先端のプロジェクトにいるような、卓越した存在なのだ。
「はは、いいな、それ」
 この人ならいずれ現実にしてしまいそうだ。
 そして今度こそもう自分の手の届かないところへ行くのだろう。
「……勝浩さぁ……」
 しばしの沈黙の後、幸也が口を開く。らしくもない遠慮がちな口調に、勝浩は幸也を見上げた。
「あの子、美利ちゃんとつきあってんの?」
 唐突な質問に、勝浩は言葉が出てこない。
「……俺が、……誰とつきあってたって、長谷川さんには関係ないでしょ」
 ようやく言葉を絞り出す。
「あ、いや、ほら、可愛い子だしさ、よく一緒にいたから、そうなのかな……って」
「……実は、前からアタックしてるんですけど、もうちょっとってとこなんです。ほら、俺って、長谷川さんみたいに女の子の扱い、うまくないし」
 心が痛くて、勝浩は口からでまかせを並べ立てた。そうでもしないと、やってられない。
「じゃあ、もう一度、美利ちゃんにぶつかってみるかな」
「あ、そう……、がんばれよ……」
 幸也のそんなセリフを背中に聞いた後、勝浩は口にした手前、美利や垪和のところにいって、残っていたワインをもらうことになった。


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ