月で逢おうよ 60

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 勝浩の足が止まる。
「いや、だから心が痛くてさ、俺は。やっぱだまし討ちみたいで」
 今の、長谷川……さん?
 だまし討ちって、どういうことだ?
「何よ、まったく、幸也ってば意気地なし」
 あれはひかりの声?
「悪かったな、とにかく、今夜、いや、明日の朝までには決める」
「ほんとに決められんのかぁ?」
 幸也の声に対してからかうように検見崎が言った。
 フラリと足が浮くような気がして、勝浩は後ろに下がった。と、背中が手すりに当たって、どん、と二階の廊下に鈍い音が響く。
「勝浩…?!」
 その音に驚いてやってきたのは幸也だ。
「朝までに、決める……って、何?」
 勝浩は訊かずにいられなかった。
「え………いや、それは…」
「だまし討ちって?」
 手をのばそうとする幸也から、身を遠ざけようと、勝浩はまた後ろに下がる。
「勝浩、それはつまりだな」
 今度はその声の方を見て、勝浩はぎょっとする。
「何で…二人いる…?」
 同じような顔が二人並んでいる。
 俺、かなり酔ってるのか?
「……また、俺のこと、だましたんだ?」
 勝手に口から滑り出てしまう言葉。
「え? 違う…勝浩、おい、聞けって」
 慌てた幸也が勝浩の腕を掴んだ。
「い、やだ、離せよ!」


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