月で逢おうよ 64

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 ユウなら自分の主人を見つけ出してくれるかもしれない。
 子どもじゃないんだから大丈夫と思いたいが、林の中に迷い込んだりしたらと思うと気が気ではない。この辺りは明け方はかなり冷え込むのだ。
「クマとか出くわしたら、どうすんだ!」
 勝浩、違うんだ、俺はただ、お前に嫌われるのが怖かっただけなんだ。
 だから……
 我ながら言い訳も空し過ぎる。
 天上の月だけが異様に明るい。
 俺の浅はかさを嘲笑っているのか。
「チクショー!」
 自分への後悔と怒りでいたたまれず、幸也は月に向かって吠えた。
 

 
 ユウの声が聞こえた気がして、ふっと勝浩は顔を上げた。
 闇に目が慣れてくるとどちらを向いても木立しかない。夜の林の中は何か言い知れぬ澱みを含んでいる。
 ぐんと冷えてきたし、Tシャツに長袖のシャツをはおっているが、じっとしていたから余計に寒くなってきた。
 立ち上がって空を仰ぐと、木々の間からまだ煌煌とした月が覗いている。それだけがまだ救いだ。
「こんなとこで死んだら、みんなに迷惑かけるよな。それにユウをまた置いていくわけにいかないじゃないか」
 勝浩は歩きかけたが、とにかくどっちに行っていいかわからない。運の悪いことに、携帯も部屋に置いてきてしまった。
「あ……」
 やっぱり、どこかからユウの泣き声が聞こえる。勝浩は耳を澄ました。
「ユウ!」
 声に出して呼んでみる。
 ワン、ワン、と応える声がある。
「ユウ! 俺、ここにいるよ、ユウ!」


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