月で逢おうよ 65

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 ガサガサガサ……
 どこかからそんな音がしたと思うと、きゅんきゅんきゅうん、という声とともにユウが現れた。
「ユウ!」
 しゃがみ込んで思い切り撫でてやると、ユウは嬉しそうに勝浩の顔やら首やらをなめまわす。
「ごめん、ユウ、ごめん……置いてったりしないって、お前を」
 すぐに人間の走ってくる音がして、息を切らしながら現れたのは幸也だった。
「この、バッカやろ! 心配させんじゃねー!」
 勝浩を見るなり幸也は怒鳴りつけた。
 驚いて思わず、勝浩も「すみません…」ととりあえず謝った。
「だいたい、携帯くらい持って歩けってんだ!」
 はあはあと荒く息をつきながら、幸也は続ける。
「確かに、俺が悪い。悪いが……、とにかく、その話はあとだ。タケも心配してるし、とっとと帰るぞ!」
 携帯で検見崎に連絡をとる幸也の背中を見ながら、ひどく怒っている、と勝浩は思った。
 一時の激情にまかせて真夜中に飛び出して迷子になるなんて、子どもじゃあるまいし、いい迷惑だというのだろう。
 確かにその通りだから、何の申し開きもない。
 でも所詮、幸也はこんな人なのだ。
 優しさをまともに受け取る方がバカなんだと言い聞かせながらも、ユウの後から現れた幸也の顔を見た時、ひどく嬉しいと思ってしまった自分を、勝浩は嗤った。
「勝っちゃん!」
 山荘の前で待っていた検見崎は、ユウを従えて戻ってきた勝浩を見ると駆け寄ってぎゅっと抱きしめた。
「心配させんなよな、命が縮んだぞ」


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