月で逢おうよ 68

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 冷ややかな勝浩の言葉に、幸也は一瞬たじろぐ。
「だから、だから、俺は……、お前がずっと好きだったんだよ」
 そんな幸也の言葉を聞いて、勝浩はわざとらしくため息をつく。
「長谷川さん、それ、自分で言ってて、よく恥ずかしくなりませんね? 立ち聞きなんかしなけりゃ鵜呑みにしたかもしれないけど、残念でしたね」
 幸也はちっと舌打ちした。
「これだよ、お前は多分、信じないと思った。だから、なかなか告ることもできなくて、俺はアメリカくんだりまで逃げたんだ」
 勝浩は顔を上げて、部屋の中をうろうろと歩きながら話す幸也を見つめた。
「高三のあの時、俺は志央にフられてやっと目が覚めたって感じだった。俺自身になれたっていうか。そしたら、お前のことが気になり始めて。でもいくら俺でも、あいつがダメならやっぱりお前が好きだなんて、そんなことを言えるほど厚顔無恥じゃなくて」
 それを聞いて勝浩は鼻で笑う。
「だから、ずっと言えなくて。でも時がたてば、ひょっとしたら言える時がくるかもしれないって。とりあえず距離をおこうって、その間に、もし、お前が誰かを見つけたら、仕方ない……そう思いながら、やっぱ心配でさ。たまたま慶洋大にいたタケに、ワゴンと引き換えにお前のようすを報告しろってだな。だが、俺とあいつよく似てるし、従兄弟だって気づかれたら、お前が敬遠するんじゃないかと思ったのさ」
「なかなかつじつまの合った作り話ですね」
 勝浩の一言に、幸也ははあっと息をつく。
「やっぱ信じないだろ、お前は」
「検見崎さんも、じゃあ、知ってて俺のことを報告していたと」
「言っとくが、やつにはただ、気になる後輩がいるから、お前のことを報告しろって言っただけだ。詳しい話なんか何もしてないからな。あいつは仕事にワゴンが欲しかっただけで、ウソの下手なヤツだし」


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