月で逢おうよ 70

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 一瞬、勝浩が怯んだ隙に、幸也は勝浩を押さえ込み、勝浩のTシャツを捲し上げる。
「やめ…てください!」
「無理だな…もう。嫌われるんならとことん嫌われろ、だ」
 抗う勝浩の頭を押さえつけて、幸也は無理やり唇をふさごうとする。
「………っ!」
 嫌いになれるものなら、とっくだ。
 勝浩は心の中で叫ぶ。
 信じられるものなら、信じたいのに。
「勝浩…」
 幸也はいつの間にか勝浩が泣いているのに気づいた。どんな時でも涙なんか見せたことがない負けず嫌いの勝浩が、しゃくりあげて泣いている。
「……知らないくせに……」
「勝浩」
「ずっと…好きだったのは俺の方なのに……」
 涙と一緒に溢れるように唇から滑り出た。
「…ごめ…勝浩…」
「あんたが俺なんか眼中になかったことも知ってた。それでも一緒にいられるだけでよかったのに………」
 パニクった頭で、思考を制御することもできずに、勝浩は言葉を紡ぐ。
 そんな勝浩の涙は幸也の胸を恐ろしく締めつけ、怯ませた。
「ひどすぎるよ……」
「ごめん、いくら謝っても足りないかもしれないけど、お前が好きだから。ほんとに、好きだから」
 幸也の言葉は勝浩が耳にしたことがないくらい優しさに満ちていた。
「まだ……半分は信じられない……」
 やはりまだ、この男から手痛いしっぺ返しを食らうのではないかという怖れがどこかにある。
 だけどうっかり口にしてしまった本音は取り戻せないし、もうどうにでもなれと、勝浩は泣き笑いの目で幸也を見あげた。


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